ちんたら療養日記4 

南の国からこんにちは

昨日のよもやま

どうもこんにちは。

えー。

久々に、本の感想を。

小川洋子 『猫を抱いて象と泳ぐ』 文藝春秋 2009年

どーしても読みたかった小川新作。

あらゆる手段の限りをつくして、念願のゲット。

読み始めたら最後、ラストまでページをめくる手が止まりませんでした。

やっぱり。

オビのコピーは、間違っていなかった。

これは間違いなく、傑作です。

従来の、私が好きだった初期の静かでかつ残酷であり、そして優しい作風と、

 (例・『完璧な病室』、『薬指の標本』など)

最近の、穏やかで淡々としつつも切ない作風と、

 (例・『博士の愛した数式』、『ミーナの行進』など)

それらのいいところが綺麗に一体化した雰囲気でした。

静かで、小さくて、外から見ると奇妙なのだけれども、触れると壊れそうなほど繊細で美しい世界。

「チェス」という、ちょっとなじみのないゲームが繰り広げる、

8×8の白黒の枡目の中に広がる深淵の宇宙。

私が好きなドロドロで嗚咽が広がる、泥と血と汗にまみれた世界とは、

明らかに対極にある世界。

読み進めていくうちに、この不思議なタイトルの持つ意味の深さに圧倒されます。

療養生活で最大の出会いの一つ、小川洋子作品。

穏やかで静かな生活の中にある、あまりにも深く心身をえぐる世界。

文学の持つ世界の広さ、それこそ、文字の下の深遠な宇宙を感じさせる小川洋子という作家さんに、

出会えたことを心から感謝したくなるような、そんな作品でした。

この本のように、チェスを指す手にその人となりや性格が現れ、

棋譜に音楽が生まれるというのであれば、

私がしようとしていることも、そうなのでしょうか。

論文の一文一文にその人間が持つ能力や性格、姿勢が現れ、

学会報告でのやり取りで協奏曲や交響曲が生まれることができるのでしょうか。

などという、ヘンテコなことを考えた昨晩でありました。